遺言書を残していない場合、残された遺族達の相続分は民法により「法定相続分」が定められていますが、「遺産分割協議」によって別の定めをすることも出来ますので、遺言書がない場合、法定相続人たちが「骨肉の争い」をすることも考えられ、それを避けるためにも遺言書を作成し、自分の意思を相続人たちに伝え、自分が残した遺産で相続人たちが争わないようにすることが大切なのです。
実の兄弟でも、親の遺産を巡って争いになるということはよくあります。
また遺言により、相続人の相続分が多かったり少なかったりすることがありますが、その理由や、自分の思いを伝えることで、相続人に理解してもらえることも多いのが現実ですので、遺言書の作成が必要なのです。
このように遺言書があれば遺産相続の手続きもスムーズに行われますが、遺言書がなければ相続手続きが中々進まず、遺産分割を巡って争いになることもあり、相続人の負担も大きくなりますので、遺言書はとても重要なのです。
・法定相続人の中に財産を相続させたくない者がいる場合(疎遠になっている人など、例えば亡くなった兄弟の子供で何十年もあっていない人など)
・子供たちが、相続財産のことで、もめてしまいそうな場合
・配偶者・子供がいない場合
・先妻との間に子供がいる場合
・寄付などの社会貢献に役立てたい場合
・相続人が不在の場合
・内縁の妻や子供の配偶者など法定相続人以外の者に財産を残したい場合
遺言書にはいくつかの方式がありますが、主に自筆証書遺言と公正証書遺言が使われています。
自筆証書遺言
適宜の用紙に遺言の内容全文・日付・氏名を自筆で書いて、印鑑を押して作成します。
■メリット
いつでも、どこでも、気軽に作成することができます。
証人もいりませんし、遺言の内容を秘密にすることができます。
■デメリット
死亡してもすぐに遺言内容に従って相続手続をすることができず、裁判所で遺言書の検認手続を経る必要があります。
紛失や改ざん等のおそれ、または発見されない可能性もあります。
公正証書遺言
証人2人以上が立会い、公証人の面前で遺言者が口述した遺言の内容をもとに公証人が作成します。
■メリット
文字が書けない方、口がきけない方、耳が聞こえない方でも遺言をすることができます。
遺言書が公証人役場に保管されるので、紛失・変造のおそれがなく、相続人による隠匿・破棄の恐れもありません。
死亡したらすぐに遺言内容に従って相続手続を行うことができます。
■デメリット
作成時に証人が2人必要となります。
公正証書作成の費用がかかります。
遺言によって定めることが可能な事項については、法律で規定されています。
それ以外の事項を遺言に記載しても、それは法律上の効力を生じず、事実的、訓示的な意味を有するにとどまります。
(1) 信託の設定 (信託法2条)
(2) 非嫡出子の認知 (民法781条2項)
(3) 相続人の廃除又はその取消 (民法893条、 894条2項)
(4) 未成年後見人の指定(民法839条1項)
(5) 未成年後見監督人の指定 (民法848条)
(6) 財産の処分すなわち遺贈 (民法964条、 986条?1003条)
(7) 寄附行為 (民法41条2項)
(8) 相続分の指定又は指定の委託 (民法902条1項)
(9) 遺産分割方法の指定又は指定の委託 (民法908条)
(10) 遺産分割の禁止 (民法908条)
(11) 特別受益持戻しの免除(民法903条3項)
(12) 相続人の担保責任の指定 (民法914条)
(13) 遺贈の減殺方法の指定 (民法1034条但書)
(14) 祭祀主宰者の指定 (民法897条)
(15) 遺言執行者の指定又は指定の委託 (民法1006条)
とされています。
遺言で、遺言執行者として専門家を指定する必要性は、一般的なケースではあまりないと思います。
専門家を指定した場合、高額な報酬が要求されますので、預貯金の解約、不動産の名義変更以外には特に遺言執行の必要が無いような場合には相続人が遺言執行者となることで十分だと思います。
◆司法書士報酬(自筆証書遺言の場合)
説明 | 司法書士報酬 |
財産額1億円以内 | 50,000円 |
1億円を超えるもの (1億円ごとに右記金額を加算) |
10,000円 |
説明 | 司法書士報酬 |
財産額1億円以内 | 80,000円 |
1億円を超えるもの (1億円ごとに右記金額を加算) |
10,000円 |
種類 | 公認人手数料 |
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 17,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 29,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
例えば、総額1億円の財産を妻1人に相続させる場合の手数料は、4万3000円です(11000円が遺言加算されますので合計54000円となります。)が、妻に6000万円、長男に4000万円の財産を相続させる場合には、妻の手数料は4万3000円、長男の手数料は2万9000円となり、その合計額は7万2000円です。
ただし、手数料令19条は、遺言加算という特別の手数料を定めており、1通の遺言公正証書における目的価額の合計額が1億円までの場合は、1万1000円を加算すると規定しているので、7万2000円に1万1000円を加算した8万3000円が手数料となります。
公証人手数料は、財産の評価額、相続させる人数によって料金が加算されるため、遺言の内容が決まり費用算出が可能となり次第、お見積をさせて頂きますので、お気軽にお問い合わせ下さい。